ネコタ 15
紅葉狩り 2.0

私の家は勤め先と直線距離にして比較的近いところにあるのですが、交通機関の連絡が悪く、地下鉄とJRを乗り継ぐと思いの外、時間がかかってしまうため普段は自転車で通勤しています。自転車通勤は天候の左右されることが多く、朝の天気予報チェックは重要です。私の場合、多少の雨でも雨具を着込んで走っているのですが、タイヤの幅が細く雪が少しでも積もるとスリップしやすくなるので(何度か転んで怪我をしています)、雪の日には自転車での通勤を避けるようにしています。

先日、朝から雪の予報が出ていたため、普段とは違って(ここがテーマ!)徒歩で通勤する事にしました。自転車では10分ちょっとの道も、徒歩だと40分以上かかります。せっかくなので、ちょっと変わった事をしてみようと思いました(ここもテーマ!)。道に落ちている枯葉の写真を携帯で撮りつつ歩く「紅葉狩り 2.0」です。
(元町二十四軒)

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「紅葉狩り 2.0」とは?
ベストセラーとなった「ウェブ進化論」という本では、Web2.0のキーワードとして次の3つが取り上げられています。
・インターネット
・チープ革命
・オープンソース
インフラの整備によるネットへのリテラシーが向上し、ソフトウェアやサービスの価格が下がり、開発者が自由にプログラムを改良できるという3つの流れが現在のインターネットサービスを支えていると言うのです。

一方、「紅葉狩り 2.0」のキーワードは、この3つです。
・道路
・超チープ革命
・オープンリーフ
よく似てますね。舗装道路を利用する事で落ち葉へのリテラシーが向上し、徒歩による交通費の劇的な削減と落ち葉の無料化が進み、観察者が自由に落ち葉を撮影できるという3つの流れが新しい紅葉狩りを支えているのです。


そもそも紅葉狩りとは何か
リンゴ、松茸、ぶどう等々、日本人はいろんな獲物を対象に狩りをします。農耕を終えた秋にだけ狩猟民族になるのかもしれません。そんな中、最も純粋に狩猟のみを楽しむことを目的としている狩猟が紅葉狩りです。
Wikipediaの紅葉の項には紅葉狩りの説明として次のように書かれています。
日本では、紅葉の季節になると紅葉を見物する行楽、紅葉狩り(もみじがり)に出かける人が多い。紅葉の名所と言われる箇所は(全国的には日光(栃木県)や京都市内等が有名)は行楽客であふれる。紅葉をめでる習慣は平安の頃の風流から始まったとされ、特に京都では多くの落葉樹が植樹されている。また、「草紅葉」の名所としては尾瀬がある。なお、この場合の「狩り」というのは「草花を眺める事」の意味をさす。 紅葉#紅葉狩り(Wikipedia)


僕らが紅葉を狩る理由
人は何故紅葉狩るのか?その答えは「そこに紅葉があるから」などという単純なものではありません。紅葉狩りは、紅葉を眺めること言い換えれば狩猟そのものを目的としています。英語では狩猟の対象となる獣や鳥をゲームと呼びますが、紅葉狩りにおける紅葉は、最もゲームらしいゲームと言っても良いでしょう。中でも最も純粋に狩猟のみを楽しむことを目的としているのが紅葉狩りです。狩りと名乗っておきながら、その獲物を食べないばかりか何一つ有効に使わないのですから。人間が太古から持つ狩猟本能と社会が求める理知的な人格とが美しいバランスで融合したゲームを日本人は古くから知っていたのです。


転換期を迎える紅葉狩り
そして21世紀を迎え時代は急速に変化して行きます。都市部に住む人々のライフスタイルの変化に伴い、紅葉狩りはその方法を変える必要が生じてきたのです。伝統的な紅葉狩りにおいて必要とされてきた「山に出かける」という行為は、時間的そして金銭的なリソースを消費します。多くの欲望を次々と消費する事が定常化している現代社会においては、狩猟本能をスマートな形で満足させるという目的に見合ったコストでは無いと判断する人が増えてきたのです。


そして紅葉狩り2.0へ
一方、紅葉狩りとは全く関係のないところで、カメラ付き携帯電話の普及、ブログ文化の浸透、ネットワークリテラシーの向上という新しい変化が始まりました。これらすべての変化は伝統的な紅葉狩りを紅葉狩り2.0へと発展させる原動力となりました。これらの変化が紅葉狩りへの動機付けが衰退した時期に、まるでタイミングを合わせるかのように始まった事はなかなか興味深い出来事です。


オープンリーフの魅力
伝統的なスタイルの紅葉狩りにおいても、葉そのものは無料で提供されてきましたが、紅葉狩り2.0では、無料化だけではなく鑑賞者が好きなように葉の状態を観察したり、葉を再利用することができます。この事をオープンリーフと呼びます。オープンリーフの文化においては、道にしゃがんで携帯電話を近づけて撮影することの恥ずかしささえ厭わなければ、落ち葉を自分の好きな姿でものにする事ができます。しかも、それを拾い集めても誰からも非難されることなく、むしろ感謝されることすらあります。


夜の落ち葉、落ち葉の夜
紅葉狩り2.0の楽しみのひとつとして夜の落ち葉観察があります。これは山に出かけて行う伝統的な紅葉狩りでは、中々できないこととでした。花見で言えば夜桜見物に相当する通の楽しみと言っても良いでしょう。携帯電話の補助光を使ってほんのり明るく撮るのもよし、手ブレを気にせずに補助光なしで撮るのもよし、昼間と違ってひと目を気にすることもありません。バシバシと撮りましょう。


雪道の落ち葉
最後に、紅葉狩り2.0の最も味わい深い楽しみ方である、雪道の落ち葉の写真を掲載します。これは、落ち葉の上に雪が降るのではなく、雪が降った後に葉が散ることで完成される形態です。アスファルトの上の落ち葉と違って、葉の形がはっきり解るという利点を持っています。この雪道の落ち葉は、まだ木に葉が残っていて、なおかつ一定量の雪が降る時期の朝にしか見られません。







通勤途中に落ち葉の写真を撮りながら歩いたというだけで、長々と引っ張ってしまいました。すみません。
こんな風に撮りました
これは違う
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