「皆様は双子アパートの事をご存じでしょうか?」
という質問で始まる場合、大抵の展開は「ご存じないでしょうね、さっき私が考えた言葉ですから」と続くのが良くあるパターンです。いや、自分でハードルを高くししちゃ駄目ですね。このページも定石どおりです。双子アパートとはこの企画のために命名した言葉で
「見た目はほぼ同じで隣接している2つのアパート」を意味します。意味しますって言われても困ると思いますがこのまま続けますよ。
今日は、この双子アパートについて「色や形」でも「立地条件」でもなく「名前」について「不統一感」に重点を置いて鑑賞してみたいと思います。
(
元町二十四軒)
定番の名前
上の写真をご覧ください。見事な双子アパートです。ちょっと見えにくいかもしれませんが、それぞれ「ハイツほりA」「ハイツほりB」という名前が付いています。このように「○○A」「○○B」といった命名は双子アパートの定番と言っても良いでしょう。同じ命名方法の事例として下の写真の「マイルーム16A」「マイルーム16B」が挙げられます。
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マイルーム
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さようなら統一感
一方こういった統一感、シリーズ感に背を向けた双子アパートが数多く存在します。つまり双子でありながら、双方に何ら関連性を見出せない名前をもつアパートです。具体的な事例は後ほどまとめてお見せすることにして、先にどうしてそのようなアンチ統一感的名前がつくのかを素人ながら考えてみました。
- 大きな会社が双子アパートを建てる。
- アパート経営をしたいAさんBさんがそれぞれのアパートのオーナーとなる。
- AさんBさんがそれぞれ好きな名前をつける。
- 統一感の無い名前がついた双子アパートになる。
なんの捻りも無い考えですみません。あと「大きな会社が」ってあたりはベテラン社会人として如何な物かと我ながら思いました。話を元に戻しましょう。以下、統一感と無縁の双子アパートをじっくりと鑑賞していきたいと思います。
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事例:「コーポジュン」「コーポロゼ」
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最初は軽めの例から。双方とも「コーポ○○」という統一された命名ルールでかつ、○○の部分はカタカナで表記されています。また、看板の意匠も同じと言って良いでしょう。ただ、「ジュン」と「ロゼ」(「日本人の名前」と「バラを現す仏語のカナ表記」、何れも推定)の部分に微妙な不統一感を感じます。同じ人が命名したのだとしたらたいしたものです。
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事例:「やすいマンション」「さつきマンション」
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この例も「○○マンション」で統一されています。また看板の形状や色使いも似ているのですが、「やすい」「さつき」という名前は、好意的に解釈すればどちらも姓という可能性はありますが、あまり統一感があるとは言いにくいのではないでしょうか。それよりも注目して頂きたいのは「さつきマンション」の下に付いている「第二」の2文字です。第一はどこにあるのでしょう?近所には見あたりませんでした。「やすいマンション」がそれではないことを切に望みます。
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事例:「パームプレイス」「METRO24軒」
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初心者の方はこのような案件から鑑賞すると解りやすいのではないかと思われます。看板のデザインは統一されながらも、名前に全く統一感がありません。片方は「立地条件とは全く無縁で何だかトロピカルな名前のカタカナ」、もう一方は「地名(近くに地下鉄二十四軒駅がある)が由来のアルファベット・数字・漢字」となっている辺りが見事なまでに好対照を成しています。逆にこういった露骨な不統一感は面白みに欠けるという点も否めません。
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事例:「COTTAGE北円山」「VILLAGE北円山」
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これは微妙に統一感のある問題作です。北円山という地名に英単語を頭に付けているという統一されたルールを持つ名前なのですが、両者のプレートのデザインが全く違う物になっています。なによりも、COTTAGE[田舎家、小住宅]と VILLAGE[村]という単語のチョイスに光るものを(無理矢理)感じました。語呂と綴りが似てるだけだし。
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事例:「コーポ24軒」「ハマナスハイツ」
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これまた違いすぎる案件。命名方法も看板も全てが違います。命名方法については他にも同様な事例があるのでこの場ではコメントを避けますが、看板の相違点に関しては見過ごすわけにはいきません。色や材質、文字の書き方、文字の方向、これら全てが異なるというのは他に例を見ません。ただ、なにぶん古い物件のため、途中で「コーポ〜」の看板が朽ち果てたために、あるいは途中で名前が変わったために、新しいのに付け替えたという可能性もあります。
総合評価 B |
不統一感 |
名前 | ★★★★ |
看板 | ★★★★★ |
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事例:「マンション白銀」「ハイツ中島」
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同様に看板が極端に異なる事例をもうひとつ紹介しておきます。上の例と共通して言えるのは「ハイツは縦書き」という点なのですが、そこに何らかの因果関係が存在すると推測するには観測母数が少なすぎます。余談ですが「マンション白銀」という絶妙な名前は玄人の仕事である可能性がかなり高いと思われます。
総合評価 B+ |
不統一感 |
名前 | ★★★★ |
看板 | ★★★★★ |
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事例:「マンション三浦」「マルエハイツ」
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この事例は何れもオーナーの姓が由来となっていると思われる名称を持ちますが、片方が「マンション+漢字表記の姓」であるのに対し、もう一方は「カナ表記の姓+ハイツ」となっています。このように両者とも「姓&建物」を素材としながら「建物名:マンション or ハイツ」「姓:漢字表記 or カナ表記」「姓:先置き or 後置き」と3つも相違点があるというのは、希少な例ではありますが、不統一感の観点から捉えると単純な対称性を徒に繰り返しているだけで、評価は高くありません。厳し言い方をすると「細部に凝りすぎて失敗した例」と言っても良いでしょう。
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事例:「24軒ハイツ」「コーポたかは志」
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(全景写真を取り忘れました)
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こちらはかなり複雑な不統一感(構成、文字サイズ、文字等々)を持った組み合わせです。看板のデザインが同じなければ双子アパートだ信じてもらえなかったかもしれません。ここまで複雑だとやりすぎな感じは否めませんが、「たかは志」という和食料理店のような表記がアクセントとなり、難点を薄めています。
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事例:「第二ファミリーハウス24」「パークハイツ24」「友栄マンション」「あかしやハイツ」
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四つ子です。4人のオーナーが相関関係無しに名前を付けたため、見事に不統一な名前になっています。命名ルールはそれぞれ「番号+"ファミリー"+建物+地名」「"パーク"+建物+地名」「"友栄"+建物」「"あかしや"+建物」となっていて散漫な印象を受けます。加えて看板の中途半端な不統一感も感心しません。この中の任意の2つを取り出して鑑賞するのであれば、それなりに味わいが出るのではないかとも思いますが、4つもあっては対比を楽しむことが難しくなってしまいます。3つ子以上のアパートは名前鑑賞の際に敬遠されるのはそのためです。
総合評価 D+ |
不統一感 |
名前 | ★★★★★★ |
看板 | ★★★ |
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事例:「ジュネパレスタケ」「リアルコートマツミ」「ビュー幸梅13」「ビュー幸梅15」
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もうひとつ四つ子です。この事例は数が倍に増えただけではなく幾つかの特筆すべき特徴があります。まず、手前の2つが不統一ネームであるのに対して、奥の2つは統一された名前を持っています。その上、統一されている方の2棟も13と15という中途半端な奇数番号が振られているため、独特のもやもや感を醸し出しています。人間に喩えるなら、一郎・三郎・剛・宏といったところでしょうか。多分、3名のオーナーが居てその中の1名が2棟を所有しているのでしょう。先程「3つ子以上は名前鑑賞に適さない」と述べましたが、本事例のように、グループ化された構造を持っている場合はグループ間の対比とグループ内の対比を楽しむことができます。
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事例:「高田ハイツ」「四・五ハイツ」
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ハイツで統一された名前で、看板にも類似性がありますが、名前の前半部分についてのみ、片方は名前、もう一方は(多分)番地となっていて足並みが揃っていません。何もかも違うのではなく、一点だけか極端に違うという高度なテクニックには驚嘆するばかりです。
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事例:「えんれいそう」「ようらく」
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最後におまけ。これは一見すると「片方だけが○○荘となっている不統一名称」のように思われがちですが、それぞれ「延齢草」「瓔珞」という植物の名前が付けられている、れっきとした統一名称双子アパートでした。
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